看護学校への進学に必要な費用を、自己資金や在学中の収入だけでまかなえない場合には、奨学金や修学支援制度を利用できることがあります。
ただし、「奨学金」と呼ばれる制度には、
- 返す必要のないもの
- 卒業後に返すもの
- 一定の条件を満たすと返還が免除されるもの
があります。
そのため、「いくら利用できるか」だけでなく、「返す必要があるか」「どのような条件があるか」まで確認することが大切です。
在学中にどの程度仕事を続けられるかについては、こちらで整理しています。
奨学金には大きく3つのタイプがある
看護学生が利用できる支援は、大きく分けると次の3つのタイプがあります。
| タイプ | 基本的な考え方 | 主な例 |
|---|---|---|
| 給付・減免 | 原則として返す必要がない | 給付型奨学金、授業料等減免 |
| 貸与 | 卒業後などに返す | JASSO第一種・第二種奨学金など |
| 条件付き返還免除 | 一定の条件を満たすと返還が免除される場合がある | 自治体の看護師等修学資金など |
特に注意したいのは、
「返す必要がない支援」と「一定の条件を満たせば返さなくてよい制度」は違う
という点です。
後者は、条件を満たせなければ返還が必要になります。
まず確認したい「高等教育の修学支援新制度」
国には、大学や専門学校などへの進学を支援する高等教育の修学支援新制度があります。
主な支援は、
- 授業料・入学金の減免
- 返還不要の給付型奨学金
です。
2026年度も制度は実施されており、大学だけでなく、要件を満たした専門学校も対象になります。多子世帯については、一定の要件のもとで授業料・入学金の減免支援があります。
ただし、
「看護専門学校ならすべて対象になる」というわけではありません。
候補校が修学支援新制度の対象校になっているかを確認する必要があります。
また、実際にどの程度の支援を受けられるかは、世帯状況などによって異なります。
JASSOには給付型と貸与型がある
高等教育の修学支援新制度で利用する給付型奨学金は、日本学生支援機構(JASSO)が実施しています。
JASSOには、この返還不要の給付奨学金のほか、卒業後などに返還する貸与奨学金もあります。
貸与奨学金には、
第一種奨学金
第二種奨学金
などがあります。
JASSOは2026年度についても、大学・短期大学だけでなく、専門課程を置く専修学校の学生を対象とした給付奨学金・貸与奨学金の申込資料を公開しています。
ただし、専門学校については、学校や学科が対象となっているか確認する必要があります。JASSOも貸与奨学金の対象となる専修学校・学科の登録情報を公開しています。
また、申込みには学力や家計などの要件があります。
そのため、
「社会人だから利用できない」「専門学校だから利用できない」と最初から決めつけず、自分と候補校が要件に該当するかを確認する
ことが大切です。
看護学生向けの自治体修学資金もある
看護学生には、JASSOとは別に、都道府県などが実施している看護師等修学資金を利用できる場合があります。
このような制度では、看護師などをめざす学生に修学資金を貸し付け、卒業後に一定の条件を満たして勤務すると、返還の全部または一部が免除される仕組みが設けられていることがあります。
看護職を確保することを目的とした制度なので、一般的な奨学金とは性格が少し異なります。
例えば、
- 指定された地域で働く
- 指定された医療機関などで働く
- 一定期間勤務する
といった条件が設けられることがあります。
したがって、
「返還免除があるからお得」とだけ考えないこと
が重要です。
返還免除の条件は必ず確認する
条件付きで返還が免除される修学資金を利用する場合には、卒業後の働き方にも関係してきます。
少なくとも、次の点を確認しておきましょう。
- どこで働く必要があるか
- 何年間働く必要があるか
- どの医療機関・施設が対象になるか
- 途中で退職した場合はどうなるか
- 看護師国家試験に合格できなかった場合はどうなるか
- 進学した場合はどうなるか
- 条件を満たせなかった場合、いつ、どのように返還するのか
「返還免除」という言葉だけを見ると、返す必要のない奨学金のように感じるかもしれません。
しかし、
条件を満たせなければ返還が必要になる制度
として考えておく必要があります。
社会人でも利用できる制度はある
社会人から看護学校へ進学する場合、
「奨学金は高校からそのまま進学する人のためのものではないか」
と思う人もいるかもしれません。
しかし、社会人であることだけを理由に、すべての奨学金が利用できなくなるわけではありません。
一方で、制度ごとに、
- 家計に関する基準
- 学業に関する基準
- 対象となる学校
- 過去の学歴
- 過去の奨学金利用状況
- その他の申込条件
があります。
JASSOの在学採用でも、大学・短期大学・専門課程を置く専修学校などを対象として、2026年度入学者向けの基準が定められています。
したがって、
「社会人だから利用できるか、できないか」ではなく、自分がそれぞれの制度の要件を満たしているか
で確認します。
候補校で利用できる制度を確認する
利用できる制度は、進学する学校によっても異なります。
候補校が決まってきたら、次の点を確認してみましょう。
- 高等教育の修学支援新制度の対象校か
- JASSOの奨学金を利用できるか
- 自治体の看護師等修学資金を利用できるか
- 学校独自の奨学金があるか
- 複数の制度を併用できるか
- いつ申し込むのか
- 入学前に手続きできるのか、入学後に申し込むのか
- いつから支給されるのか
学校公式サイトや学校案内で分からない場合は、学校の奨学金担当窓口へ確認します。
奨学金は「いつ受け取れるか」も確認する
奨学金を利用できることが分かっても、それだけで入学時の資金問題が解決するとは限りません。
例えば、入学金や前期授業料は入学手続きの段階で必要なのに、奨学金が実際に支給されるのは入学後、という場合があります。
JASSOにも、進学後に学校を通して申し込む「在学採用」があります。
そのため、
「いくら利用できるか」と同時に、「いつ受け取れるか」も確認する
必要があります。
特に確認したいのは、
奨学金が支給される前に、入学手続きや初回の学費納付のために、どのくらいの資金を準備しておく必要があるか
です。
入学時に必要となる学校納付金については、こちらで整理しています。
借りられる額ではなく、必要な額から考える
貸与型の奨学金を利用するときは、
いくらまで借りられるか
から考えるのではなく、
自分はいくら不足するのか
から考える方がよいでしょう。
まず、
- 卒業までに実際に必要となる支出
- 自己資金
- 在学中に見込める収入
- 給付型奨学金や授業料減免などの支援
を確認します。
そのうえで、不足する分について貸与型奨学金などを検討します。
卒業までの支出と収入の考え方については、こちらで整理しています。
病院独自の奨学金もある
病院や医療法人が、看護学生を対象とした独自の奨学金制度を設けていることもあります。
なかには、看護学校を卒業した後、その病院などで一定期間勤務すると返還が免除される制度もあります。
一見すると非常に利用しやすい制度に見えますが、
- 卒業後の就職先
- 勤務しなければならない期間
- 途中で退職した場合
- 条件を満たせなかった場合の返還
などを確認する必要があります。
病院奨学金は、卒業後の働き方にも直接関係するため、次の記事で詳しく考えます。
→ 次に読む:「病院奨学金・返済免除制度とは?」
看護学校進学の費用を支える制度は、奨学金だけではありません。
社会人の場合は、雇用保険の「専門実践教育訓練給付金」を利用できることがあります。
これは奨学金ではなく、一定の条件を満たした人が厚生労働大臣指定の講座を受講した場合に、教育訓練経費の一部が支給される制度です。
(制度情報確認:2026年8月)
参考資料
- 文部科学省「高等教育の修学支援新制度」
- 日本学生支援機構「2026年度奨学金案内」
- 日本学生支援機構「専門課程を置く専修学校の貸与奨学金対象学科登録校」
- 厚生労働省「看護師等修学資金貸与制度関係資料」