社会人から看護師をめざす人にとって、学費の負担を軽減できる可能性がある制度の一つが、専門実践教育訓練給付金です。
一定の条件を満たす人が、厚生労働大臣の指定を受けた教育訓練を受講した場合、支払った教育訓練経費の一部が雇用保険から支給されます。
看護師資格の取得を目標とする養成課程も対象になっており、条件を満たせば、教育訓練経費について、3年間の課程で最大192万円まで支給される可能性があります。
ただし、社会人であれば誰でも利用できるわけではありません。また、すべての看護学校・課程が対象になっているわけでもありません。
自分が受給要件を満たしているか、志望する学校・課程が指定講座になっているか、この二つを確認する必要があります。
専門実践教育訓練給付金とは
教育訓練給付制度は、働く人の能力開発やキャリア形成を支援するための雇用保険の制度です。
対象となる教育訓練には、
- 専門実践教育訓練
- 特定一般教育訓練
- 一般教育訓練
の3種類があります。
このうち専門実践教育訓練は、特に中長期的なキャリア形成につながる教育訓練を対象としたものです。
厚生労働大臣の指定を受けた講座を受講し、本人が所定の受給要件を満たしている場合、教育訓練経費の一部が支給されます。
つまり、学校から支給される奨学金ではなく、雇用保険制度を利用した国の給付制度です。
看護学校でも利用できる
専門実践教育訓練の対象には、看護師などの資格取得を目標とする養成課程が含まれています。
実際に厚生労働省が公表している専門実践教育訓練の指定講座には、看護師養成課程が多数含まれています。
ただし、
「看護学校だから利用できる」という制度ではありません。
同じ看護師養成課程でも、専門実践教育訓練の指定を受けている課程と、受けていない課程があります。
そのため、学校名だけで判断せず、自分が入学を考えている課程が指定講座になっているかを確認する必要があります。
これは看護学校を比較するときの確認項目の一つになります。
いくら支給されるのか
専門実践教育訓練給付金は、条件によって支給割合が変わります。
| 支給の段階 | 支給割合 | 年間上限 | 3年間の場合の上限 |
|---|---|---|---|
| 受講中の基本給付 | 50% | 40万円 | 120万円 |
| 資格取得等・就職等の条件を満たした場合 | 70% | 56万円 | 168万円 |
| さらに賃金上昇の条件を満たした場合 | 80% | 64万円 | 192万円 |
まず、教育訓練経費の50%、年間40万円を上限として、受講中に6か月ごとに支給されます。
その後、訓練修了後1年以内に資格を取得するなど所定の条件を満たし、雇用保険の被保険者として就職または雇用を継続した場合は、合計70%まで追加給付を受けられる可能性があります。
さらに、2024年10月1日以降に受講を開始した人で、所定の条件を満たしたうえで、訓練修了後の賃金が受講開始前より5%以上上昇した場合は、合計80%まで追加給付されます。
したがって、
「看護学校の学費が最初から80%支給される」わけではありません。
50%を基本として、その後の資格取得、就職・雇用継続、賃金上昇などの条件を満たすことで、70%、80%へと追加給付される仕組みです。
また、支給割合の対象となるのは、制度上の「教育訓練経費」です。学校に支払う費用のすべてが給付対象になるとは限りません。
誰が利用できるのか
専門実践教育訓練給付金を利用するためには、雇用保険の加入歴などの条件があります。
現在働いている人
受講開始日に雇用保険の被保険者である場合、原則として、受講開始日までに3年以上の支給要件期間が必要です。
ただし、初めて教育訓練給付金を受ける場合は、原則として2年以上あれば対象となります。
退職している人
退職して現在は雇用保険の被保険者でない場合でも、利用できることがあります。
原則として、
- 雇用保険の被保険者資格を失ってから受講開始までが1年以内
- 支給要件期間が3年以上
- 初めて教育訓練給付金を受ける場合は2年以上
などの条件を満たす必要があります。
妊娠、出産、育児、疾病、負傷などによって受講を開始できなかった場合には、適用対象期間を延長できる場合もあります。
雇用保険の加入歴が途中で途切れている場合などは、単純に現在の勤務年数だけでは判断できません。
自分が対象になるか分からない場合は、ハローワークで確認するのが確実です。
どの看護学校でも使えるわけではない
専門実践教育訓練給付金を利用するには、二つの条件を分けて考える必要があります。
一つは、自分自身が受給要件を満たしていること。
もう一つは、入学する学校・課程が厚生労働大臣の指定を受けていることです。
例えば、雇用保険の加入期間など本人側の条件をすべて満たしていても、入学する課程が指定講座でなければ、専門実践教育訓練給付金は利用できません。
逆に、学校が対象になっていても、本人が受給要件を満たしていなければ利用できません。
したがって、
本人の受給資格と、学校・課程の指定状況の両方を確認する
ことが必要です。
志望校が対象か調べる方法
専門実践教育訓練の指定講座は、厚生労働省の「教育訓練給付制度 厚生労働大臣指定教育訓練講座検索システム」で調べることができます。
看護学校の公式サイトでも、
「専門実践教育訓練給付金対象講座」
「専門実践教育訓練指定講座」
などと案内している場合があります。
ただし、同じ学校でも学科や課程によって指定状況が異なることがあります。
学校名だけを見るのではなく、自分が受験する学科・課程まで確認してください。
分からない場合は、学校に問い合わせてもよいでしょう。
なお、学校が指定講座であることと、自分に受給資格があることは別です。自分の受給資格については、ハローワークで確認します。
いつ確認すればよいか
専門実践教育訓練給付金の利用を考えているなら、入学してから調べるのではなく、学校候補を検討している段階から確認しておくことをおすすめします。
3年間の課程なら、条件によっては100万円を超える給付を受けられる可能性があります。
同じような条件の学校を比較している場合、専門実践教育訓練の指定講座かどうかによって、実際の費用負担が大きく変わることがあります。
ただし、
「給付金の対象だから、その学校を選ぶ」
という決め方をする必要はありません。
通学のしやすさ、学費、入試内容、教育環境、卒業まで学び続けられるかなどと合わせて判断する材料の一つとして考えます。
奨学金との違い
専門実践教育訓練給付金は、奨学金ではありません。
奨学金には、返還が必要な貸与型と、返還の必要がない給付型があります。
一方、専門実践教育訓練給付金は、一定の受給要件を満たした人が厚生労働大臣指定の教育訓練を受けた場合に、雇用保険から教育訓練経費の一部が支給される制度です。
そのため、看護学校進学に必要なお金を考えるときは、
- 奨学金
- 病院奨学金
- 専門実践教育訓練給付金
を同じものとして考えず、それぞれの制度を分けて確認する必要があります。
奨学金などと併用できるか
専門実践教育訓練給付金を利用する場合でも、奨学金などほかの修学支援制度を利用できることがあります。
ただし、併用できるかどうかや、ほかの制度から支援を受けた場合に教育訓練経費として扱われる金額がどうなるかは、利用する制度によって異なります。
日本学生支援機構の奨学金、学校独自の奨学金、病院奨学金などを併せて利用する場合は、それぞれの制度の条件を確認してください。
利用を考えるなら、入学前に手続きを確認する
専門実践教育訓練給付金は、入学後に申請すれば自動的に受けられる制度ではありません。
受給を希望する場合は、受講開始前に訓練前キャリアコンサルティングを受けてジョブ・カードを作成し、原則として受講開始日の2週間前までに、ハローワークで受給資格確認の手続きを行う必要があります。
そのため、利用を考えている人は、少なくとも次の三つを早めに確認してください。
- 自分の雇用保険の加入歴から受給資格があるか
- 志望校・候補校の課程が専門実践教育訓練の指定講座か
- 受講開始前にどのような手続きが必要か
受講開始後も、専門実践教育訓練では原則として6か月ごとに支給申請が必要です。
制度は変更されることがあります。実際に利用するときは、厚生労働省・ハローワークの最新情報を確認してください。
専門実践教育訓練給付金は、社会人だからこそ確認しておきたい
専門実践教育訓練給付金は、社会人から看護師をめざす人にとって、学費負担を大きく軽減できる可能性のある制度です。
特に、これまで雇用保険に加入して働いてきた人は、自分が対象になる可能性があります。
ただし、
社会人だから利用できるのではなく、本人の受給要件と、学校・課程の指定の両方を満たす必要があります。
看護学校への進学を考え始めたら、学費そのものだけでなく、専門実践教育訓練給付金の対象になるかも確認しておきましょう。
次は、学校納付金以外も含めて、看護学校に通うために必要となる費用全体を考えます。
→ 次に読む: 看護学校に3〜4年間通うと総額いくらかかる?
(制度情報確認:2026年9月)
参考情報
制度の詳細・最新情報は、厚生労働省「教育訓練給付金」、ハローワーク「教育訓練給付金」、厚生労働大臣指定教育訓練講座検索システムで確認できます。