看護学校を受験するとき、多くの人が悩むのが志望理由です。
社会人の場合、
なぜ今になって看護師をめざすのか
これまで別の仕事をしていたのに、なぜ看護なのか
なぜこの学校なのか
といったことを、自分の言葉で整理する必要があります。
そこで、
人の役に立つ仕事がしたい
医療に貢献したい
手に職をつけたい
と書こうとする人もいるでしょう。
もちろん、そう思っていること自体に問題はありません。
しかし、それだけでは、
なぜ自分が看護師をめざすのか
が十分に伝わらないことがあります。
志望理由で大切なのは、立派な言葉を探すことではありません。
まず、
自分がなぜ看護師をめざすのかを、自分自身で整理すること
から始めます。
志望理由は「きれいな文章」から作らない
志望理由を書こうとすると、最初から文章にしようとしがちです。
例えば、
私は以前から人の役に立つ仕事に関心があり……
と書き始めるかもしれません。
しかし、文章から考え始めると、
それらしい言葉をつなぐこと
に意識が向きやすくなります。
すると、
- なぜ看護師なのか
- なぜ今なのか
- なぜその学校なのか
という本来考えるべきことが曖昧なまま、文章だけが整ってしまうことがあります。
まずは文章を書かずに、
志望理由の材料を出す
ことから始めましょう。
STEP 1 「なぜ看護師なのか」を考える
最初に考えるのは、
なぜ数ある仕事の中で、看護師なのか
です。
ここは志望理由の中心になります。
例えば、
- 家族の入院を通じて看護師の仕事を知った
- 自分自身が医療を受けた経験がある
- 現在の仕事を通じて医療・福祉に関心を持った
- 人と直接関わりながら支える仕事をしたいと思った
- 将来の働き方を考え直す中で看護職に関心を持った
など、人によってきっかけは違います。
ただし、きっかけだけでは志望理由になりません。
例えば、
家族が入院したとき、看護師さんが親切だった
という経験があったとしても、
その経験から自分が何を感じ、なぜ自分も看護師になりたいと思ったのか
まで考える必要があります。
出来事そのものより、
その出来事を自分がどう受け止めたのか
を整理します。
「人の役に立ちたい」だけで終わらせない
「人の役に立ちたい」という気持ちは、多くの仕事に当てはまります。
看護師だけではありません。
そのため、
人の役に立ちたいから看護師になりたい
だけでは、
なぜ看護師なのか
の理由になっていません。
同じように、
安定した資格がほしい
手に職をつけたい
という理由も、それだけでは看護師を選ぶ理由にはなりません。
だからといって、こうした気持ちを書いてはいけないということではありません。
例えば、
長く働ける資格を身につけたい
と思っているなら、
そこからさらに、
なぜ数ある資格の中で看護師なのか
を考えます。
一般的な理由から、自分と看護師をつなぐところまで一段深く考える
ことが大切です。
STEP 2 「なぜ今なのか」を考える
社会人の志望理由では、
なぜ今、看護師をめざすのか
も重要です。
高校卒業時に看護の道へ進まず、別の仕事や生活を経験してきた人も多いでしょう。
その場合、
なぜ当時ではなく、今なのか
を自分なりに整理します。
例えば、
- 以前から関心はあったが、当時は別の進路を選んだ
- 社会人経験を通して、自分がしたい仕事が明確になった
- 家族や自分の経験をきっかけに、看護への関心が具体的になった
- 子育てなど生活の変化を経て、今なら進学に取り組めるようになった
- 今後の働き方を考え、看護を学ぶことを決めた
などが考えられます。
ここでも、
もっともらしい理由を作る必要はありません。
大切なのは、
自分はこれまでどのように生きてきて、なぜ今この選択をしているのか
を、自分の中で説明できることです。
「昔から看護師になりたかった」と無理に作らない
志望理由を考えていると、
子どものころから看護師に憧れていました
のような話が必要なのではないかと思うことがあります。
しかし、本当にそうでなければ、無理に作る必要はありません。
社会人になってから看護師という仕事を知り、
今になって初めて本気でめざそうと思った
のであれば、それが自分の経緯です。
社会人受験では、
これまで看護師をめざしてこなかったこと
そのものが問題なのではありません。
重要なのは、
なぜ今、その選択をしたのか
を整理できていることです。
STEP 3 これまでの経験を振り返る
社会人には、高校生とは違う経験があります。
例えば、
- 仕事
- 転職
- 家事
- 育児
- 家族の介護
- 病気や医療との関わり
- 人間関係
- 責任を持って何かを続けた経験
などです。
こうした経験は、志望理由を考える材料になります。
ただし、
社会人経験が長いから有利
管理職だったから評価される
という意味ではありません。
「社会人選抜とは」でも確認したように、経歴そのものが合格を保証するわけではありません。
見るべきなのは、
その経験から何を学び、それが今の進路選択にどうつながっているか
です。
例えば、
接客業を10年間してきた
という事実だけで終わらせず、
多様な人と接する中で、相手の話を聞き、状況に応じて対応することの重要性を学んだ
など、自分がその経験をどう捉えているのかを考えます。
ただし、無理にすべてを看護へ結びつける必要もありません。
自分の経験の中から、本当に関係しているものを選ぶ
ことが大切です。
STEP 4 「なぜその学校なのか」を考える
「看護師になりたい理由」と「その学校を受ける理由」は同じではありません。
看護師になるには複数の学校があります。
その中で、
なぜその学校を選んだのか
を考えます。
「自分に合った看護学校の選び方」で確認したように、学校を選ぶときには、
- 教育方針
- カリキュラム
- 実習環境
- 学習支援
- 卒業後の進路
- 通学可能性
などを確認してきました。
その中から、
自分がその学校で学びたいと思った理由
を整理します。
例えば、
自宅から通えるから
だけでは、その学校の教育を選んだ理由としては弱くなります。
しかし、通学可能性が社会人にとって重要なのは事実です。
そこで、
通学可能であることに加え、○○という教育方針に関心を持った
など、現実的な条件と学びたい理由を分けて考えると整理しやすくなります。
学校の言葉をそのまま写さない
学校公式サイトには、
- 教育理念
- アドミッション・ポリシー
- 学校の特色
などが書かれています。
これらを確認することは重要です。
しかし、
本校は豊かな人間性を備えた看護師を育成します
と書かれていたからといって、
貴校の「豊かな人間性を備えた看護師を育成する」という教育理念に共感しました
と、そのまま写すだけでは、自分の志望理由にはなりません。
確認したいのは、
その学校のどこに自分が関心を持ったのか
です。
学校の言葉と、自分がそこで学びたい理由をつなげます。
STEP 5 将来どのように働きたいかを考える
志望理由を考えるときには、卒業後についても少し考えてみます。
例えば、
- どのような看護師になりたいか
- どのような人に関わりたいか
- どのような働き方をしたいか
- これまでの経験をどのように生かしたいか
などです。
この段階で、
○○病院の△△病棟で働く
まで具体的に決まっている必要はありません。
看護をまだ学んでいない段階なので、進学後に考えが変わることもあります。
大切なのは、
看護師資格を取ること自体をゴールにしないこと
です。
看護師になった後、自分はどのように働きたいのか
を考えると、志望理由全体がつながりやすくなります。
まずは4つの問いに箇条書きで答える
ここまで考えたことを、いきなり文章にする必要はありません。
まず、次の4つについて箇条書きにします。
1 なぜ看護師なのか
- きっかけは何だったか
- 何を感じたか
- なぜ他の仕事ではなく看護なのか
2 なぜ今なのか
- これまでどのような進路を歩んできたか
- なぜ今、進路を変えるのか
- 今なら取り組める理由は何か
3 なぜその学校なのか
- どこに関心を持ったか
- 他校との違いは何か
- そこで何を学びたいか
4 将来どう働きたいのか
- どのような看護師になりたいか
- どのような人に関わりたいか
- これまでの経験をどう生かしたいか
この段階では、文章のうまさを気にしません。
まず材料を出すこと
が目的です。
【やってみましょう】志望理由の材料を出す
紙やノートに、次の問いへの答えを書いてみてください。
Q1 看護師という仕事に関心を持ったきっかけは何ですか。
Q2 その出来事から、何を感じましたか。
Q3 なぜ他の仕事ではなく看護師をめざすのですか。
Q4 なぜ今、看護学校を受験しようと思ったのですか。
Q5 これまでの仕事や生活で、自分に影響を与えた経験は何ですか。
Q6 その経験から何を学びましたか。
Q7 なぜその学校を受けようと思ったのですか。
Q8 看護師になった後、どのように働きたいですか。
きれいに答えなくて構いません。
一つの問いに複数の答えがあっても構いません。
まずは、
自分の中にある材料を外に出す
ことが目的です。
材料が出たら、つながりを見る
箇条書きができたら、それぞれを眺めます。
例えば、
家族の入院を経験した
↓
看護師が患者だけでなく家族にも説明していたことが印象に残った
↓
自分も人の不安に向き合える仕事がしたいと思った
↓
現在の接客業で培った「相手の話を聞く経験」も生かしたい
というつながりが見えるかもしれません。
ここで重要なのは、
出来事を並べるだけではなく、「だから自分はどう考えたのか」を入れること
です。
志望理由は、
経験 → 考えたこと → 看護をめざす理由
とつながると、自分の言葉になりやすくなります。
すべての経験を入れる必要はない
社会人になるまでには、多くの経験があります。
それを全部志望理由に入れようとすると、話が散らばります。
例えば、
- 就職
- 転職
- 結婚
- 出産
- 育児
- 家族の病気
- 自分の病気
- 介護
など、すべてが重要な経験だったとしても、志望理由書に全部書く必要はありません。
選ぶのは、
看護師をめざす今の自分につながっている経験
です。
「人生をすべて説明する」のではなく、
志望理由を理解してもらうために必要な経験を選ぶ
と考えます。
STEP 6 材料を文章につなげる
材料が整理できたら、初めて文章にします。
文章の流れは、一つに決まっているわけではありません。
例えば、
- 看護師をめざす理由
- その理由につながった経験
- なぜ今なのか
- なぜその学校なのか
- 将来どう働きたいか
という順番も考えられます。
ただし、学校によって志望理由書の形式や文字数は違います。
質問文が決められている場合もあります。
そのため、
まず自分の志望理由の材料を整理し、その後で学校が求める形式に合わせる
という順番にします。
最初から400字、800字と文字数を合わせようとすると、必要なことまで削ったり、逆に内容を水増ししたりしやすくなります。
「立派に見せる」より「つながっているか」を確認する
文章ができたら、
この文章は立派に見えるか
ではなく、
話がつながっているか
を確認します。
例えば、
- 看護師をめざす理由と経験がつながっているか
- 「なぜ今」が説明できているか
- その学校を選ぶ理由が書かれているか
- 将来像と志望理由が大きく矛盾していないか
を見ます。
また、
人の役に立ちたい
社会に貢献したい
患者に寄り添いたい
といった言葉を書いている場合は、
「自分にとって、それは具体的にどういうことなのか」
をもう一度考えてみます。
抽象的な言葉を使ってはいけないのではありません。
その言葉の後ろに、
自分の経験や考えがあるか
を確認します。
AIが作った志望理由をそのまま使わない
現在は、生成AIに、
看護学校の志望理由を書いて
と頼めば、それらしい文章を作ることができます。
しかし、その文章をそのまま使うことはおすすめしません。
理由は単純です。
志望理由は、本人がなぜ看護師をめざすのかを整理するためのものだからです。
AIが作った文章は、読みやすくても、
- 自分の経験と微妙に違う
- 本当は思っていないことが入っている
- 面接で説明できない
- 他の人にも当てはまる一般的な文章になる
ことがあります。
AIを使うなら、
- 自分の箇条書きを整理する
- 話のつながりが分かりにくいところを指摘してもらう
- 抽象的な表現になっている箇所を探してもらう
- 自分に追加で考えるべき質問を出してもらう
といった補助として使う方がよいでしょう。
最終的に、
「これは自分の考えだ」と説明できる文章にする
ことが必要です。
志望理由は面接のためにも整理しておく
志望理由書を提出する学校では、書いて終わりではありません。
面接で、
なぜ看護師をめざしたのですか
なぜこの学校なのですか
と聞かれる可能性があります。
だからこそ、志望理由は暗記する文章としてではなく、
自分の考えとして整理しておく
ことが重要です。
ただし、
- 面接でどのように話すか
- どのような質問があるか
- どう練習するか
は、次の「社会人の看護学校面接 完全ガイド」で扱います。
このページでは、話す中身そのものを作るところまでです。
志望理由は「自分の選択を説明できる状態」にする
社会人の志望理由で大切なのは、特別なエピソードを持っていることではありません。
また、感動的な文章を書くことでもありません。
整理したいのは、
なぜ看護師なのか
なぜ今なのか
なぜその学校なのか
将来どう働きたいのか
の4点です。
そして、それぞれを、
自分の経験や考えとつなげる
ことです。
志望理由を書く作業は、
学校に好かれる文章を作ること
ではなく、
自分がなぜこの進路を選んだのかを、自分の言葉で説明できるようにすること
と考えるとよいでしょう。
次は、このように整理した内容を、面接でどのように伝えるかを考えます。
→ 次に読む:「社会人の看護学校面接 完全ガイド」